施設内虐待の予防,  連載

施設内虐待を防ぐ方法を考えてみた(No.040)

6-(4)調査には正直に答えましょう

施設内虐待が「私」から「私たち」の課題に変化するときがあります。虐待加害者以外の職員も外部調査の対象となるからです虐待の内容で調査のスタイルも変わるのでしょうが、普通は調査者(児童相談所職員)が施設に出向いて、調査者が指定した順番で個別の聞き取りが行われます.

 複数の職員が何組かに分かれて聞き取り調査をする場合もあります。施設幹部が同席する場合もありますが、調査内容で変わります。基本的には、質問されたことに正直に答えるのが一番良い方法です。何か隠そうとしたり、知らないふりをすると調査時間と解決までの期間が長引いてしまいます。

 質問されていないことを伝えるのが良い方法なのかどうかはわかりません。虐待加害者が調査事案以外にあれこれと問題があるならば伝えた方が良いのかもしれません。「虐待を知っていた」とか「虐待じゃないかなぁ?」ってことになるとネグレクト加害者になってしまいますね。「正直に」ということなら正直に「知っていた」ことを伝えればいいのですが、次の質問は「なぜ、通告しなかったのか?」ということになります。こういう質問には、正直に「勇気がなかった」なんて答えてみてはどうでしょうか。実際、同僚とか上司に「それって虐待じゃないのか?」と伝えることも、通告することも、それなりに勇気の必要なことだと思います。(私なら自分を守るためにも正直に話しますが・・。)

ありそうなことですが、施設幹部から所謂「口裏合わせ」の指示を受けた場合には、日頃の人間関係を基本に判断するのでしょうね。ここではそういうズルのやり方は取り上げません。

6-(5)子どもへの調査もあります。

 子どもたちも直接の調査対象になります。被害児童本人と周辺の児童です。職員が同席する方が良いのですが、緊張する子どもの気持ちを支えるという趣旨です。勿論、同席するには、子ども本人と調査者の了解が必要です。子どもに同席を求めるときには、圧力にならないように最大の配慮が必要です。そして調査の途中でも、退出が必要と感じたら直ちに退出するという判断も必要です。(調査者の前で子どもに同席の了解を確認することも必要です)。調査の時間が終わってから、更に子どもに質問をするのは、あまりお勧めではありません。一人で調査に向かった子どもに「どんな質問をされたのか?」とか「どのように答えたのか?」と投げかけるのは、子どもの緊張を上塗りするようなことになりますから、普通の施設職員は、そんなことはしないはずです。何より、騒ぎが終わって改善に向けての努力を考慮しておくと子どもたちの動揺をきちんと受け止めておくべきではないでしょうか

6-(6)どんな質問があるのだろうか

 調査者のセンスで質問の仕方は変わりますが、対象が子どもでも職員でも、施設幹部でも基本的な調査の標的は同じはずです。①通告内容は本当のことか?(年月日、時間、場所、目撃?) ②他に同様のことがないか? ③加害者は誰か? という3点に絞られます。答えによっては、④事案は継続的なことなのか? ⑤もしかしたら組織的な行為なのか?との内容が追加されます。さらに別の施設内虐待が発覚され、調査者が通告するということもありそうです。 

 施設内の事故調査と同じような内容です。「子どもが骨折した」、「心臓発作」とかの事故などの調査は、そういう気持ちがなくても、ネグレクトを疑って「防げたのではないか?」、「偶発的な出来事なのか?」、そして「事故原因は何か?」ということになります。事故と虐待が違うのは、偶発的という結論はあり得ないのです。

 施設幹部には、「事案まで組織的にどのような発生防止に取り組んできたのか?」という質問が追加されます。調査聞き取りでの弁明は控えた方が良いと思います。施設はチームでお仕事をしていますから、個別調査聞き取りでの弁明は個別の意見でしかありません。これは、幹部も職員も同様です。弁明は、改善策や再発防止策と一緒になされるべきでセットにならない弁明は、開き直りになってしまいます。謙虚に調査を受けましょう。

 どうしても弁明をしたいのであれば、それなりの内部調査を終了してのちに施設の公式見解として調査主体者に伝えるのが適当じゃないでしょうか。

6-(7)調査を乗り越える

 外部の調査が入る前に施設が調査をする場合でも、前述の項目と同じ考えで良いと思います。ただし、外部から「通告がありましたので調査に入ります。」と言われてから、施設が調査するのでは、何があったのかよく分からないままに対応しなければなりません。ですから、調査が入るとわかった時点で直ちに内部調査を行っておくことが良いと思います。そして、正直に調査報告書を提出しておけば、外部調査は、報告書の裏付けを取るということで終わります。そして施設の自浄能力を主張できるかもしれません。(能力をどう評価されるかはわかりませんが)。内部調査で隠蔽や事実でない報告をすると調査も長引く上、施設が受けるダメージも大きくなります。

 内部調査で概要が分かった時点で施設長や幹部が外部調査を受ける職員に対してしてはいけないことがあります。①「余計なことを言わない。②施設内虐待のことを外部の人に話してはいけない。という指示。もっと良くないのは、③具体的な内容を挙げて、このことは言ってはいけない。と命令することです。職員にも正義がありますから、気持ちに反するような指示・命令は、一時的には過ごせるでしょうが、やる気のある職員を退職に追い込むことにもなりかねません。

 子どもの施設が家庭的であることと家庭とは違います。施設でお仕事をしていても施設職員には、それぞれに家族や友人がいらっしゃいます。「誰にも話していけない」という辛いことを誰かに話すことは重要なストレス管理です。施設内虐待に関しては「外部に漏らしてはいけません」という指示・命令は、ほぼ通用しません。それほど施設職員にとって虐待の発生は辛くて切ないことなのです。

連載第4回は、施設内虐待あるあるのようになりましたが、経験のない方には多少の参考になるのだと思います。実際に役にたつかどうかではなく、心の準備だけはしておいた方が良いと思います。次回連載第5回は、マスコミ対応も含めた調査終了後に施設が行うことを考えてみましょう。

ほぼ、思い付きで書いていますから、明からに間違っている場合もありそうです。ぜひ、ご意見をください。

2021年7月13日

連載第1回 施設内虐待を防ぐ方法を考えてみた(NO.010)

連載第2回 施設内虐待を防ぐ方法を考えてみた(NO.020)

連載第3回 施設内虐待を防ぐ方法を考えてみた(NO.030)

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