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子どもの施設でのQOLとVOL
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子どもが「生活の価値」を発見するための手引き
生活の質(Quality Of Life・QOL)
生活の価値(Value Of Life・VOL)
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1 はじめに(入院して気づいたこと)
2024年に断続的に入院患者として過ごしてケアされる側になって、施設で生活する子どものQ O L(生活の質)を考えてみました。病院では、入院患者の治療とケアを通じて、入院中と退院後のQ O Lの向上、病院のスタッフは、工夫と努力をしています。患者の側から見ると提供されるQ O Lを受け止めるあるいは自身の課題としてQ O Lの向上・維持(回復)にチャレンジすることになります。
子どもの施設で仕事をしてきた経験と実践を通じてのQ O LとV O L(生活の価値)を考えてみました。
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2 子どもの施設での「生活の質」と「生活の価値」
(1)提供されるQ O Lと主体的なV O L
病院(施設)で提供されるQ O Lも主体的に取り組むことはできますが、そのチャレンジの目標は主体的な設定ではありません。例えば退院(退所)後のQ O Lを想定しても、それは本当に主体的な取り組みなのでしょうか。成人が入院している場合には、そのような主体的な取り組みが可能なのでしょう。(「歩けなくなった。歩けるようになって退院したい」は、入院患者のリハビリへの動機となります。)しかし、子どもの場合、退所後(成人)でのQ O Lは、まだ見たことも経験したことのないQ O Lだと承知してください。子どもの施設で提供されるQ O Lには、自由性が乏しく子ども自身が創造することが難しいのです。
(2)将来のために今を犠牲にする
例えば「将来、グループホームで生活することを想定して、自室で一人で過ごす練習をする」ことに意味はあるのでしょうか。一概にないとは言えませんが、ご本人がグループホームでの生活を承知して、自分の課題として「一人で過ごすこと」を選んでいるのであれば、練習は有効な手段となります。しかし、練習が苦痛であれば、「来るか来ないか分からない将来のために今を犠牲にしている」ことに他なりません。
(3)子どもたちは「今、ここで」を生きる実存主義者
子どもたちは「今、ここで」の実存を最優先しています。過去も未来もそれほど重要なことではないのです。何かに憧れて努力をする子どもはいますが、「今。ここで」と将来が繋がっている(連続している)からです。しかし、押し付けられた憧れや将来展望では、なかなか「今、ここで」と結びつけることが難しく子どもは生活の価値を発見することは難しいようです。
(4)主体性を尊重する
大人との関係に中で子どもが成長すると同じような出来事は、日常の中にたくさんあります。お洋服がとてもわかりやすいと思います。大人が選ぶ「子どものカワイイ洋服」も、子どもの側から見て、「カワイイ」かどうかはわかりません。子どもが自分の心身にフィットしていないと感じたら拒否するのです。しかし、周囲の大人がカワイイと伝えるとなんとなく「カワイイんだなぁ」と感じてしまうこともあります。そこに大人の役割があるということです。(おだてて、騙すということではありません。)
(5)主体的に構造化できるQ O LがV O L
子どもの施設でのQ OLは提供されています。Q O Lのテーマが素晴らしいものでも子どもが受け入れてくれるかどうかは、テーマの中に子ども自身のV O Lが含まれていることが必要です。子どもはQ O Lの中で主体的にテーマを選び、自分自身のこととして構造化を図り、V O Lとなります。そして、V O Lは幅広いQ O Lを提供することで成長し変化が可能となります。
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3 子どもが生活の価値を発見する手助けをする。
(1)生活の価値〜子どもの生活と成長を支える
30年前の支援の改善チャレンジでは、いきなり「生活の価値・V O L」と言っても職員の皆さんは、ピンと来なかったようです。当時は社会自立を目標として「子どもの権利擁護」、「主体性の尊重」、「社会認識の発達」を具体的なテーマとしていました。そして子どもの生活と成長を支える方法のひとつに「子どもが生活の価値の発見を支援する」ことを重要な課題としていました。
当時、「生活の質」(Quality Of Life・Q O L)の概念は専門職の養成課程である程度の知識を得ていても、「生活の価値」(Value Of Life・V O L)という言葉・表現は、あまりポピュラーではなく、職員には新しい言葉だったので戸惑いもたくさんあったようです。
(2)スタートは「順位のない競争」
子どもが経験のないことにチャレンジする方法のひとつとして、他の人がやっているのを見て「僕も私もやってみたい」とか「僕なら私ならこうするなぁ」と感じることを「順位のない競争」と言います。体験を重ねることは大切ですが自分で体験しなくても他の人が体験したお話やそれを見ることは、すごく意味のあることなのです。見たり、聞いたりすることがチャレンジのきっかけになり、自分自身のこととしてV O Lを発見することになれば更に素晴らしい出来事です。
(3)Q O LとV O L
子どもの最善の利益を実現するため、主体性の尊重をテーマに手段として、「子どもが生活の価値を発見する手助けをする」ことに取り組んできました。「生活の価値」は、それがどのような内容であるかに関わらず、子どもが日々の生活を送る上での「生きがい」に近いこととなりうる大切なテーマです。
専門職が養成課程で学ぶ「生活の質」と「生活の価値」の違いをA I(ChatGPT)に訊いてみました。
(4)Q O LとV O Lの違いを確かめる。(ChatGPTに訊いてみた。)
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専門職が養成課程で学ぶ「生活の質」と「生活の価値」の違いをA I(ChatGPT)に訊いてみました。
質問:子どもの施設でのQOLとVOLの違いを教えてください。
☆ChatGPTの返事
子どもの施設でのQOLとVOLの違いについて説明しますね。子どもの施設とは、例えば児童養護施設や障害児施設、福祉施設など、子どもたちが集団で生活し支援を受ける場所を指します。ここでのQOLとVOLも、一般的な意味と同じように異なる概念です。
① 子どもの施設でのQ O L
QOLは、施設で生活する子どもがどれだけ快適に、幸福に、満足して過ごしているかに関わります。ここでは、子どもが日々の生活の中で感じる満足感や安心感、幸福感が重要な要素となります。
施設での生活の質を高めるためには、次のような点が考慮されます。
安全で安心できる環境:施設内での安全確保や、子どもが安心して生活できる場所が提供されているか。
・健康と福祉:十分な栄養、適切な医療、心理的サポートが受けられるか。
・教育と成長:学校教育や、子どもの学びを支援するプログラムが提供されているか。
・個別のニーズへの配慮:それぞれの子どもに合わせたサポートやケアが行われているか。
・社会的な関係の構築:他の子どもや施設スタッフとの健全な関係が育まれているか。
このように、Q O Lは「物理的・心理的にどれだけ満たされた環境か」に焦点を当てており、子どもが日常的にどれだけ幸せで満足しているかを反映します。
② 子どもの施設でのV O L
VOLは、施設での生活がその子どもにとってどれだけ意味や意義を持つかに関わります。この概念は、子どもが施設での経験をどう捉え、どんな人生観や成長を促進するかという視点から見たものです。
子どもの施設でのVOLを高めるためには、以下の点が重要です:
・人生の意味を感じる経験
子どもが自分の生活に意味を見出せるような経験(例えば、他者との協力や、自分の成長を実感できる場)が提供されているか。
・自己肯定感の育成
:どんな環境にあっても、自分には価値があると感じられるような支援が行われているか。
・人生の目的の理解:
施設での生活を通じて、将来に向けた希望や目標を持つことができるような機会が提供されているか。
・社会とのつながりの形成:
社会に出たときに役立つ価値観やスキルを学ぶことができるか。
・つまり、VOLは、「施設での生活がどれだけその子どもにとって意味深く、将来的に有益なものとなるか」に焦点を当てています。単なる日常の満足度だけでなく、子どもがどのように自己成長し、社会とのつながりを築き、人生を豊かにするための土台を作るかが重要です。
③ まとめると:
Q O L:施設で過ごす子どもが「今、どれだけ快適で満足しているか」という点が重視されます。ここでは、物理的・精神的な健康や安全、教育的な充実が大切です。
VOL:施設で過ごす子どもが「この生活を通じて、どれだけ人生に意味を見出し、将来に向けた希望や目的を持てるか」という点に焦点を当てます。
どちらも子どもの成長にとって重要な側面ですが、生活の質は主に現在の生活の快適さに関わり、VOLはその経験が将来的にどう役立つか、人生にどのような意味を与えるかに関係します。
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参考;若狭蔵之助先生に教えていただいた「生活の価値」1997年講演録から抜粋
①誰でも生活の価値持っている。小学校の2年生はてんとう虫が価値だった。だけど、5年生ぐらいになると、アヒルや兎が価値になる場合がある。②でも、生き物ばっかりじゃない。マフラーを編むこととか、織物を織ることとか、そういうことが 価値になる。③中学生になったら、男の子から来るラブレターを待ってることが生活の価値になるかもしれない。大学生になると350ccのバイクを買うのが生活の価値になる かもしれない。④どんどん変わっていくんだ。そりゃ変わっていかなけりゃ。お医者さんとか、農業の学者とか出るはずがない。変わってって俺はお医者さん、こういう生活の価値を認めたんだよ。それで俺はお医者さんになりたいんだ。俺はこれで畜産の人工授精する人になりたいんだって、だんだんこう広がっていくわけだ。⑤でも初めはてんとう虫なんだ。自分の生活の価値が何なのかを発見させなくちゃいけないんだけど、それは与えるもんじゃなくて発見させるもんで、初めはダンゴムシみたいなくだらないもの、そういうものの価値を皆が認めてやらなければ高尚な価値に到達しないってことだけは覚えておいて。
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3 子どもが生活の価値を発見する
30年前には、V O Lを発見する手助けをするための手がかりは若狭先生の言葉だけでしたが、これを具体的な支援に反映しようとしたのです。
① 様々な体験・経験を重ねること
- 年齢に応じた様々な体験を重ねることを方法としました。
- 経験は「買物」、「働く」、「調理」、「生活」の四分野として、それまでの施設内完結型の支援から子どもたちが地域に出て、Q O Lを自ら高めるという経験を積む、そして大人はそれを支援するのです。
③ 順位のない競争
前項の他には、順位のない競争を含め施設内で体験できるさまざまなイベントに主体的に参加することも大切です。
④ 積極的な失敗の経験(プロジェクト)
実際には子どもはどんどん失敗しますが、大人も一緒に失敗しながら、意欲と喜びを共有するのです。
⑤「生活の価値を発見する支援」
☆子どもを誘って一緒にチャレンジをする。(順位のない競争)
☆うまくいけば一緒に喜び、失敗すれば一緒に次のチャレンジに期待する。(協働と共感)
☆これは昨日の自分、明日の自分との永続的で身近な「順位のない競争」なのです。
2025年1月11日 和泉屋与兵衛 代表 西井啓二