施設内虐待の予防,  連載

施設内虐待を防ぐ方法を考えてみた(No.010)

2021年5月9日 夜の躑躅

1 施設内虐待はなくならない。

次のような職員が施設には一定の割合でいますから、施設内虐待はなくなることはありません。①悪意を持っている。②暴力で成功した経験がある。③自分に正義があると信じている。④自覚がない。⑤暴力に暴力で対抗する。⑥その他。思い付きを並べてみましたが、体罰や暴力、心理的虐待や性的虐待も概ね同じような基準で推測できます。施設内でのネグレクトは、もう少し違ったシステムがあるようなのでは、後ほど説明します。①〜⑥のタイプの職員を採用段階で選別できれば良いのですが、試験や面接では、振り分けられない事柄です。それにまだ何もしていないのに責任を問うのはおかしな話です。

 これらのタイプの人が職員になっても、必ず虐待加害者になるかというとそうではありません。このタイプの人は、様々な状況で加害者になり得ると考えた方が良いのだと思います。施設内虐待の可能性は、施設職員に責任があるのは当然ですが、施設管理者や同僚に責任も生じます。施設の問題として次の項目を思いつきました。①子どもの権利擁護の文化がない、あるいは意識が乏しい。②暴力や抑圧の伝統や文化がある。③職員間にパワハラ等のモラルハラスメントがある。④施設の理念や伝統を優先している。⑤施設管理者が「施設内虐待などあるはずがない」との思い込み、あるいは思い込みたい。⑦虐待があっても気が付かない、または知らないふりをしている。⑧施設のルールが虐待や権利侵害を肯定している。⑨その他。 このように思い付きを並べてみると職員のタイプを見抜くよりも、施設側の課題が多数あるように思います。この思い付きは、「こんなことかなぁ?」と並べただけですから、きっと反論や見落としがあるに違いありません。それでも、理解できるのは、「施設内虐待は、発生しうるのだ」ということには間違いがないようです。同時に「もしかしたら防ぐことができるのかもしれない。」ということを示唆しています。

2021年5月9日 夜の藤花

2 学ぶべきは、非暴力

 残念なことに一部の人に暴力の概念があって、その他の人は暴力から遠くにいるということはなさそうです。むしろ、誰にでも暴力加害者になり得る可能性を持っているのです。でも、世界中に暴力が溢れていないのは、教育や文化が理性となって、暴力を押し留めているのでしょう。

 私たちは、虐待やD Vの環境で育った子どもに「暴力を学んでいる。」と表現しますが、実は「非暴力を学んでいない。」という方が正しいのだと思います。つまり、施設にあっても、職員が非暴力を学ばなければならないのです。そして、権利侵害を正すよりも権利擁護の具体的な方法を学ぶ方が正しい方法だと考えるに至りました。「子どもと施設の権利擁護全国ワークショップ」は、そのような思いで2010年にスタートしたのですが、施設にとって、子どもの権利擁護は都合の悪いこともあるようで、2019年に挫折してしまいました。今となってはFacebookだけが取り残されています。

2021年6月4日

3 施設内ネグレクトの難しさ

 被措置児童等虐待は、①身体的虐待、②心理的虐待、③性的虐待、そして④ネグレクトの4点が挙げられています。①、②、③は比較的わかりやすいのですが、施設内での育児放棄(ネグレクト)は、ピンとこないものです。一般的な考え方は、基本的生活習慣と言われる①食事、②清潔、③睡眠、④排泄、⑤着脱衣のケアが十分なされていないという場合ですが、さすがにこれが出来ていないという施設は虐待以前の保護責任という課題があります。むしろ、職員と子ども間、あるいは子ども間での虐待や暴力、いじめ等を放置するとか、深夜に子どもが外出し放題とかの管理責任が不十分な場合は、子どもに責任を求めるということにならないのでネグレクトなのでしょう。

 例えば、災害を想定した避難訓練を行なっていなければ、該当するのかもしれません。それを思えば、災害対応のマニュアルがあるようにネグレクト防止というよりも、様々な子どもの状況に応じた対応マニュアルが重要になります。必要なマニュアルを整備しなければ、ネグレクトが生じても不思議ではないということになります。子どものケアのマニュアルや情報共有のルールを整備することは、ネグレクト防止の一助になり得るという事です

(参考:暴力の人類史」スティーブン・ビンカー 青土社)

 このテーマで、しばらく連載を続けます。様々な意見、反論があろうかと思いますが、どうしても施設職員や施設長の弱点や問題点をあげつらうということになりそうです。現場の実態にそぐわない意見だと思います。こういう考え方もあると受け止めてください。

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