子どもと大人 その3
前回の「子どもと大人」の中で「集団の中の個別的配慮」をレストランのウェイター・ウェイトレスの配慮を引用して説明しました。その後、このテーマを含んだ研修講師の招聘を受けて、スライドを作っていたのですが、もうちょっとわかりやすい引用を思い付いたのです。元々は漫画家でエッセイストの東海林さだおさんのエッセイ(1980年代)に書いてあったのを施設職員に向けて改ざんしています。余談ですが映画「たんぽぽ」(監督 伊丹十三、1985年)の冒頭で山崎努が語るラーメンの話は、東海林さだおさんの表現を引用しているのです。
スナックのお姉さんに学ぶ集団の中の個別的配慮
前回はレストランでしたが思い付いたのは、お酒を飲ませるスナックです。最近は、社交界に顔を出さなくなったので近寄らなくなったのでこの表現が通じるのかどうかよくわからないのですが、スナックのお姉さんのミッションに対する姿勢と併せて、研修では説明しました。
本来、「できない」とか「難しい」と結論づけるのではなくて、巷のスナックでは、「集団の中の個別的配慮」ができているのに、まして施設で働く専門職の皆さんができない訳がないという主張です。そして使命(Mission)・目標(Objective)・戦略(Strategy)・戦術(Tactics)・遂行(Execution)・評価(Control)の流れ(MOSTEC)モステックメソッドを説明しておきます。
子どもの施設の使命は、たいへんわかりやすく、児童福祉法・子どもの権利条約にある「子どもの最善の利益」です。ここでいう「子ども」は、一人一人のこどもであって、決して「子ども達」ではありません。そして、普通は使命と目標・戦略・戦術・遂行・評価は、一貫して連続しているものなのです。
実際にMOSTECが連続せず、説明のできないチグハグな施設があることは間違いありませんが少なくとも普通の施設なら自信を持って「大丈夫! ちゃんとつながっています。」と言えるはずです。このMOSTECに従って、「集団の中の個別的配慮」を説明しようとしているのです。
① 使命 経済的利益
② 目標 お客様にたくさんお酒を飲んでいただく・リピート
③ 戦略 お客様に気持ちよく過ごしていただく(時間と空間)
④ 戦術 どのお客様と関係を大切にする
視線を合わせる・身体を接触させる・話を聞く・相槌・うなづく・笑い声・歌に拍手・お酒をつぐ・笑顔・雰囲気を盛り上げる・機嫌を察する・退屈しない
⑤ 遂行 実際にやってみる
⑥ 評価 売り上げ・リピートのカウント サービスの検証
この説明は、大学や保育専門学院の講義の中では、話していたのですが、学生の皆さんは、まだ若くお酒を提供するスナックに出入りすることも少ない様子で、今ひとつピンと来なかったと思います。
つまり、どのお客様も無視しないと言うことなのですが、当たり前のことですが、「成果を無視しない」は、行動経済学(ダンアリエリー)から引用しています。行動経済学では、従業員の「やる気」をいかに引き出すかというテーマですが、子ども施設の場合は「成果」というよりも「存在」を無視しないという方が適切かもしれません。「一人一人を大切にする」には、「一人一人との関係を大切にする」のだと説明していましたが、より実践的に表現すると「施設職員は、子ども一人一人の振る舞いを無視しない」ということでいかがでしょうか
ただし、気をつけなくてはならないのは「施設職員がどうしたのか?」ではなくて「子どもがどう感じているのか?」なのですね。
施設で働いている大人なら、誰でも知っているように、間違いなく子どもは「集団の中の個別的配慮」を大人に向かってこともなくやっています。それを大人が出来ないわけがありません。面白いですね。
2024年7月8日