活動報告

高校全入運動と緑風高校PTA会長

6月15日(月) 学校運営協議会が開催され委員として参加しています。初代会長に選任されました。

緑風高校 第1回学校運営協議会 資料

鳥取県立緑風高等学校、つまり緑風高校です。定時制・通信制の高校で生徒数は約250人。昼間の高校に進むことが出来なかった方や高校進学の機会を得られなかった方、昼間の高校に進んだのですが挫折してしまった方。事情は様々です。

 施設長(児童心理治療施設 鳥取こども学園希望館)をしていたときに入所していた子の一人が定時制に通っていました。入学前から学校評議員といて関わりがございましたが、保護者(児童の親権代行者)となったときに「PTA会長を引き受けてくれないか」という打診がありました。通学生が実子でないことや年齢のこともあり、迷いましたが、社会的養護の歴史で「高校全入運動」というのがあります。1970年代当時、一般の高校進学率が90パーセントを超えていましたが、施設で生活していた子どもたちの進学率は40パーセント程度でした。施設から高校に進学するためには児童相談所の審査が必要で、基準は「成績優秀」、「品行方正」、「他の児童の模範となる」そして進学は実業高校(工業・商業・農業高校など)に限るということでした。

 鳥取こども学園の藤野興一さん(社会福祉法人鳥取こども学園理事長)は、児童指導員として、子どもたちや関係機関、他の児童養護施設と連携に取り組んでいました。施設出身の子が高校進学の道を断念させられ、15歳で家族もなく家もなく、お金もない状況で就職をしなければならない理不尽さを「施設の子どもこそが高校に進学し、適切な教育を受ける必要がある。」と主張して、全国の児童養護施設の子どもたちと職員に呼びかけたのが「社会的養護での:高校全入運動」です。

 児童養護施設の子が高校進学することは特別なことでしたから、「特別育成費」(今も使われている措置費の区分です。)の対象とすることは、児童相談所と鳥取県が了解すれば良いのですが、進学する子どもの方は、施設入所するまでの家庭環境や心の様々な動きなど、いろいろな理由で全体に学力不振の状態でした。高校全入運動は、制度の壁を突破するだけでなく、子どもたちの進学の意欲や将来への希望を育て、学ぶことへの興味をはぐくむ必要があります。

 高校全入運動のもう一つの壁は、入学選抜試験です。「どうせダメだ」と夢や希望を失っている子どもたちの受験勉強をサポートし、一緒にチャレンジに取り組むことの苦労は並大抵ではなかったと思います。それでも学業不振の子どもたちを受け入れてくれたのが、当時の鳥取県立鳥取農業高校美和分校(昼間定時制)でした。余談になりますが、鳥取農業高校は鳥取砂丘に代表される乾燥地農業の礎を築いた歴史ある高校です。藤野興一さんは、鳥取農業高校美和分校の先生方と協力して、社会的養護の子どもたちの高校生活を支えてこられました。その後、鳥取県内の高等学校の再編成が行われ、鳥取農業高校は、他校と合併、現在の鳥取湖陵高校へと発展しています。

藤野興一さんが、美和分校時代にPTA会長を9年間、続けていらっしゃったのです。随分と昔話が長くなりましたが、社会的養護分野で仕事をしていることで、緑風高校のPTA会長も社会貢献であり、子どもたちの権利を守る一環ではないのかとお引き受けしたという経緯です。

 就任当時、 謙虚に 「PTA会長に最もふさわしくない人物」と藤野興一さんに相談したら「確かにそうだ」と躊躇なく肯定されてしまいましたが、緑風高校の先生方や家族の皆さんと一緒に活動するのは、楽しいひとときです。PTA会長ではありますが、家族に生徒がいません。規定では保護者・家族でもPTA会員になれるそうです。今年で4年目になると思います。そろそろ交代の時期かとも思うのですが、家族の皆さんや先生方と交流することが楽しく、まずは本年度、精一杯楽しむことにします。これも和泉屋与兵衛の活動です。

緑風高校PTAの活動「緑風応援食堂」です。

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